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ひらがな・カタカナを読み,書くことを目標に,就学前から作業療法を継続していた子が,ようやく目途が立った字を書いてくれました.“よく頑張ったね.渡辺も嬉しいです”という共感と称賛の意味を,涙を指で拭う動作,泣きまねで伝えようとしました.あくまで作業療法の技術として利用している泣きまねでしたが,本当に涙が出てきてしまいました.すぐ話題を変えてごまかしましたが,こんなにも前頭葉の抑制機能が落ちてしまったのかと嘆いている今日このごろです.人の生涯発達と各年代別の課題(危機)を自分と照らし合わせ,自分を見つめなおすことが多かったのですが,ここにきて“後半に入ったなぁ”と,あらためて思います.
「子どもは褒めて伸ばす」と言われます.しかし,失敗経験が多く,よく激励され,注意を受け,時に学習無力感に陥っている子どもにとっては,そんなに簡単なものではありません.課題になっている作業を細かく分析し,練習の段階づけをして,手助けを最小限にして,本人がやったという成功体験をもってもらい,家族が共有できる説明を加えて「褒めどころ」をたくさんつくることが,OTの腕の見せどころになります.泣きまねも作業療法の技術と先に述べましたが,「褒め方」もたくさん用意して使い分けることができるといいですね.自尊心が芽生えているけれど照れ屋で気持ちをうまく表せない男の子には,グータッチしてみるのが適当かもしれません.お母さんに依存しがちでそばから離れない女の子には,お母さんに頭をなでてもらうほうがいいかもしれません.どんな褒め方がいいのか,答えはないのですが,細かな段階づけに合わせ,また子どもの受け取り方に合わせて使い分けることで,信頼関係を築き,次の練習に向かう意欲を高めることができるかもしれません.
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