わたしの大切な作業・第13回
細々と編み続ける
群 ようこ
pp.429
発行日 2019年5月15日
Published Date 2019/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001201679
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昭和一桁生まれの私の母は、家庭内のもののほとんどを手作りしていた。学校の専攻が家政科だったので、得意分野でもあった。家族全員の布団、洋服、和服を縫い、セーターも機械編み、手編みの両方ができ、冬用の防寒肌着まで編んでいた。私は彼女から小学校二年生のときに編み物を習った。中細毛糸と棒針をもらって、基本的な表編み、裏編みを習い、あとは編み物の本を見ながら模様編みを勉強した。その後、棒針編みよりは編み進みがはやい、かぎ針編みもはじめて、小学校の高学年のときには、自分の着るものくらいは編めるようになっていた。
それから私の趣味は読書と編み物になった。編み物をしながら本を読んだりしていたが、還暦を過ぎた今は、根気もなくなるし目も疲れるしで、セーター一枚を編むのに、休みながら二年がかり、三年がかりである。二十代の頃には一週間にセーターを三枚編み、これまでに百数十枚以上編んだなんて、信じられないスローペースなのだ。最初は模様を編み間違えたり、すぐ疲れてしまう自分に苛立ったりして、中断したときもあったが、やはり自分は手を動かしているのは好きだとわかった。以前の自分とは比べず、今の自分なりに楽しめばいいと思うようになった。
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