今月の言葉
精神のたたずまいへの開眼
長谷川 泉
1
1医学書院編集部
pp.9
発行日 1959年4月1日
Published Date 1959/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201653
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ちかごろはノイローゼばやりだという.近代人として,複雑な社会生活をしてゆくのには,よつぽど強靱な精神力がなければならないのであつて,あたりまえの神経ではまいつてしまうということになるのであろうか.
心臓が強い——ということばがある.きわめてポピユラーなことばであつて,世わたりの上手な人には,このような,ほめことばだか,けなしことばだか知らないが——.このようなことばが再三再四投げかけられるようでなければ,複雑な20世紀の世の中をわたつてゆけない時代があつた.だが,今や心臓が強いということばは,すでに時代おくれになりつつある.ここで,言を改めて,頭が強い——ということばが誕生しなければならない.頭が強い,と言われるくらいな強靱な精神力を持たなければ,この複雑な20世紀の世の中をわたつてゆくことはできないであろうからである.
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