連載 症候学メモ・2
開眼時のロンベルク微候
平山 惠造
1
1千葉大学神経内科
pp.168
発行日 1985年2月1日
Published Date 1985/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406205461
- 有料閲覧
- 文献概要
起立位で両足を揃えた後,眼を閉じると,上体が急速に動揺し始め,よろめき,強ければ遂には顛倒するに至るものをRomberg徴候ということは周知の通りである。これは,下肢の深部位置覚が障害されているために,それを代償していた視覚をさえぎると,平衡が保てなくなって生ずるものと理解されている。従って,通常はこのテストをするのに閉眼することが要件である。洗面時に生ずる動揺(洗面現象)も理由は同じである。
しかし,実際には閉眼しなくてもRomberg徴候のみられることがある。たとえば,視運動性眼振をみるときなどに用いる縞模様を,検査として眼前で動かすと,閉眼したときと同じ様によろめき,Romberg徴候が陽性に認められることがある。しかしこのような方法は,通常に行なわれるRomberg検査に比べれば感度が悪く,日常の診察の中では,かえって暇もかかるので,特に推奨するものではない。唯,論理的に,これは,Romberg徴候にとって眼瞼を閉じる運動が重要なのではなく,視線が固定しないと平衡が保てず,視覚が起立平衡障害を矯正していることを証明するのに役立つにすぎない。
Copyright © 1985, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.