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学会に参加して感じたこと
今回の学会テーマは,「根拠に基づいた作業療法の展開」でした.このテーマを実現するうえで,エビデンスは欠かせないと考え,初日のイブニングセミナー「作業療法のエビデンスを構築する3つの戦略」を聴講しました.このセミナーの聴講者は,660名を超えており,学会参加者の関心の高さがうかがえました.セミナーでは,エビデンスレベルのピラミッドを用いて,底辺の論説等から頂点のメタアナリシスやシステマティックレビューまでの違いを明確にしたうえで,目の前のクライエントからエビデンスを構築していくゴールド・スタンダードな方法を実例を交えて説明されていました.さらに,事例を集積・分析する方法やこれらの方法の個性を科学的に検証する統計モデルの紹介も含まれており,非常にためになる充実した内容となっていました.エビデンスに基づいた介入は大切ですが,その介入に至るまでのエビデンス(根拠)と理論の理解は欠かせません.根拠を明確にするためには,クライエントの適切な病態解釈が必要です.根拠に基づいた作業療法を展開していくためには,しっかりと目の前のクライエントと向き合うことが大切だとあらためて感じました.
セミナー以外にも,多くの口述発表やポスター発表がありました.身体障害領域では,脳卒中が232題と一番多く,次いで運動器が87題となっていました.中でも,私はALSの症例を担当する機会が増えているため,ALS関連の発表を中心に聴講しました.今学会のALSの発表は3件であり,いずれもコミュニケーション支援に関するものとなっていました.コミュニケーション支援という言葉は,一見するとわかりやすく思えますが,実はコミュニケーションの意味は深く,YES/NOの意思表示,ケアに関すること,自由会話等,多岐に渡ります.その伝達手段も,文字盤等のローテクから機器等のハイテクと範囲が広く,受け手の理解力への考慮も要する等,より細やかな支援が必要になっていると感じました.また,ALSは進行性疾患のため,退院後の生活や予後を想定することも必要であり,地域との連携が不可欠だとあらためて思いました.
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