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身体障害領域における問題解決の糸口:現地での発見
2023年11月10日から3日間,第57回日本作業療法学会が沖縄コンベンションセンターで開催されました.今回もオンライン配信を行うハイブリッド開催でしたが,私たちは全日程現地参加させていただきました.本学会は「ものごとの仕組みに注目する—作業療法における問題解決の糸口として—」をテーマとし,長尾 徹学会長の講演からスタートしました.学会長講演では,セラピストの誰もが知るマズローの欲求階層説に基づき,長尾学会長自らの経験を当てはめ,本学会テーマに沿って作業療法を実践するうえでの問題解決の糸口をわかりやすく講演していただきました.発表演題数は1,425題と従来の学会よりも多く,ポスター発表では午前・午後の張り替え式であったのが特徴的で,非常に活発な意見交換が行われていました.
ここからは私たちが従事している「身体分野」の視点から本学会を振り返ります.有働は脳血管分野を中心に聴講し,時期を問わず目標設定によるクライエント(以下,CL)に意味のある作業・役割の抽出や早期からのADL介入,EBPを意識した介入等の重要性,自動車運転支援に関する事例・研究発表が多い印象を受けました.また,脳血管専門作業療法士セミナーにて,長谷川敬一先生の「作業療法士がなぜAIやロボットに仕事を奪われにくいのか.よくAIやロボットと違う方向にあるから生き残るんだと思われがちだが逆で,AIやロボットを活用する職種だから生き残っている」との言葉に大変感銘を受けました.私自身今後の臨床において,CLの作業にしっかり焦点を当てAIやロボットをうまく使ってCLに提供していきたいと強く感じました.小林は循環器臨床作業療法研究会の企画セミナー「組織で行う心大血管疾患の作業療法」に参加し,本学会のテーマである「仕組み」に焦点を当てた,組織的にチーム環境を醸成させるコツについて学ぶことができました.特に印象に残るのは,質疑応答の中で広島大学病院の塩田繁人先生からお話しのあった「多職種連携で重要なポイント3点」についてです.1つ目は「飲み会に行くこと」,2つ目は「ニコニコしながら言いたいことは言うこと」,3つ目は「チーム員のニーズを満たすこと,与えられる前に与える」が重要であるとご紹介されていました.身体障害領域の現場では,医学的管理のうえでCLの作業を支援する必要があると考えています.CLが希望する生活や作業の実現に向け,多職種との良好な関係性を構築し,チームの中で穏やかな雰囲気でいつつも重要なことは発信し,作業療法士に期待されている成果を出し続けることが重要であると学びました.加えて,常に最新の情報を取り入れ,AIやロボットとも協業することで,より質の高い作業療法の提供が可能になると考えます.興味深い演題が非常に多くありましたが,現地で回り切ることができなかったため,会期後はオンデマンド配信にて,引き続き思考を深めていきたいと思います.
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