連載 下肢慢性創傷への作業療法・第4回
下肢慢性創傷患者の創傷治療と歩行能力維持へのかかわり—理学療法士の役割
河辺 信秀
1
,
渡部 祥輝
2
,
山﨑 尚樹
2
,
中村 壽志
3
Nobuhide Kawabe
1
,
Yoshiteru Watanabe
2
,
Naoki Yamazaki
2
,
Hisashi Nakamura
3
1城西国際大学
2茅ヶ崎リハビリテーション専門学校
3湘南医療大学
pp.636-642
発行日 2018年7月15日
Published Date 2018/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001201342
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Key Questions
Q1:足底圧上昇に関与する因子とは?
Q2:off-loadingに重要な治療とは?
Q3:創傷治療における,PTとOTの協働のあり方とは?
下肢慢性創傷患者におけるPTの役割
近年,下肢慢性創傷は,下肢切断の主要な要因となりつつある.創傷の発生要因は,糖尿病や末梢動脈疾患等の動脈硬化性疾患が中心であるため,高齢患者が多い.このため,大切断に至ると歩行困難に陥りやすい.これらの背景を受けて日本下肢救済・足病学会が設立され,大切断予防(救肢)を目的とした活動が行われてきた.その結果,治療は格段の進歩を遂げ,多くの下肢慢性創傷が大切断に至らずに治療可能となりつつある.
このような創傷治療の状況の中で,PTに求められている役割は,2つに集約される(図1).1つは,治療中の廃用症候群の問題である.治療の進歩により治癒を望めるようになったが,その治療期間はどうしても長期にわたる.このため創傷が治癒しても身体機能が低下し,歩行能力が失われてしまう場合も多い.これらの廃用症候群を予防し,歩行機能を維持することがPTに課せられた役割の一つである.創傷の治癒のためには感染除去,血流改善が重要であるが,創部の免荷(off-loading)も必要になる.廃用症候群の予防のためには,立位や歩行等の下肢への荷重を伴う運動を増やす必要があるが,荷重の増加は創傷の治癒を阻害する要因になってしまう.したがって,理学療法では,いかに創傷の治癒を阻害しないようにoff-loadingを達成し,身体活動量を維持するかという介入が必要になる.
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