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はじめに
2018年4月に診療報酬・介護報酬の同時改定が行われ,地域包括ケアシステムの推進,自立支援・重度化防止に資する質の高い介護サービスの実現・充実に向け,回復期と生活期の双方においてリハビリテーションの連携や情報共有は,重要視されている.
回復期リハビリテーション病棟は,日常生活動作(activities of daily living;ADL)能力向上による寝たきり防止と家庭復帰を目的とした病棟であり,生活を再建し,自宅退院を支援することが主な目的である.昨今,回復期リハビリテーション病棟入院による身体機能やADLの改善に関する報告が散見される.回復期リハビリテーション病棟協会の報告1)では,自宅復帰率68.7%,平均在院日数69.8日であり,Functional Independence Measure;FIM合計平均得点は入院時71.0点から退院時91.2点に改善したことを報告している.しかしながら,回復期リハビリテーション病棟退院後,入院中に向上したADLをいかに維持・向上させるかが重要2)な課題であり,長期に在宅生活を継続するためのポイントとなる.
石川ら3)は,FIM運動項目80点以上では屋内ADLが自立しており,生活動作を困難なく繰り返すことができるため,ADLは低下し難く,70点未満の患者ではFIMの向上は難しいとしている.米澤ら4)は,退院時FIM運動項目70点台の患者は,ADLの変化しやすい群として退院後のフォローアップの重要性を指摘している.また,Forster5)らは,脳卒中患者の入院中の転倒率21%が,退院後6か月間に73%へと増加したことを明らかにしている.ADLの維持や要介護の重度化防止には,特に入院中に転倒歴がある患者に対して転倒予防対策や歩行能力維持・改善が必要となる.しかし,在宅生活を継続するためには,心身機能・構造や活動レベルのみで退院後の生活を予測するのは困難で,家族状況や家屋環境などの環境因子,対象者の趣味や嗜好などの個人因子を含めた複合的な視点で生活機能を検討することが重要である.
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