連載 ユーモアと笑い・第5回
ユーモアと人のこころ
柏木 哲夫
1
Tetsuo Kashiwagi
1
1淀川キリスト教病院
pp.60-61
発行日 2018年1月15日
Published Date 2018/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001201164
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ユーモア志向性
少し学問的なことになるが,「ユーモア志向尺度」というものがある.ある人がユーモアのセンスをもっているかどうかを調べようという試みである.具体的にいえば,ユーモアに関するチェックリストである.たとえば,うつ病のチェックリストがある.それには,「気分が憂鬱である」,「夜,寝られない」,「希望がもてない」,「集中力がない」等の項目があり,それをチェックしていき,全部でいくつ以上あると「うつ病が疑われます」というものである.同じようにユーモアに関するチェックリストをつくって,いくつ以上該当する項目があると「あなたはユーモアセンスがあります」,「あなたはユーモアのセンスがありません」という,いわばユーモアセンス診断である.
以前はこういう試みがまったくなかった.何となく「あの人は面白い人だ」とか,「あの人はユーモアのセンスがある人だ」とかいうが,それは受け取る人の主観的判断であった.私自身ユーモアを測る尺度があればおもしろいと思い,大学に勤めていたときに研究した.尺度は「生産性」(冗談をよく思いつく等),「向ユーモア性」(面白い話を見つけたら,いつも誰かに話す等),「易ユーモア性」(少しぐらいの苦労なら笑い飛ばしてしまう等)の3つに分けて,リストをつくった.リストを用いた調査の詳細を述べる紙幅はないが,ユーモアを対象にした,しっかりした研究が存在することは知っておいていただきたいと思う.
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