連載 ユーモアと笑い・第8回
ユーモアのやり取り
柏木 哲夫
1
Tetsuo Kashiwagi
1
1淀川キリスト教病院
pp.352-353
発行日 2018年4月15日
Published Date 2018/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001201250
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ユーモアの双方向性
医療現場では患者さんと医師の信頼関係がとても大切である.ホスピスという現場で,この信頼関係を築くのにユーモアが重要な役割を果たすことを経験した.そしてユーモアの双方向性が成立したときには,信頼関係が深まるということもわかった.
第2回でも紹介したが,進行した食道がんで,固形物がほとんど喉を通らない患者さん(女性)があった.ある日の回診のとき,「いかがですか?」との私の問いかけに対して,彼女はいかにもつらそうに「ものが通らなくて……」と言った.何か喉を通るものはないかと考えていた私の頭に食べ物が一つ浮かんだ.私は彼女に「トロだったら,トロトロと喉を通るかもしれませんよ」と言った.彼女は「私も一日中トロトロ寝てないで,トロに挑戦してみます」と言った.そばで私たちの会話を聞いていたご主人が「私もトロい亭主ですが,トロぐらいなら買ってきますよ」と言い,すぐに立派なトロを3切れ買ってきた.なんと患者さんは2切れ食べた.文字通りトロトロと入ったのである.
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