連載 ユーモアと笑い・第1回【新連載】
ユーモアと笑い
柏木 哲夫
1
Tetsuo Kashiwagi
1
1淀川キリスト教病院
pp.1022-1023
発行日 2017年9月15日
Published Date 2017/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001201060
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笑いは人間存在の一部
笑いは遺伝子の中に組み込まれているように思えてならない.いわば本能の一種なのかもしれない.生まれてすぐ赤ちゃんは母親の乳首を口に含み,母乳を飲む.誰かに教えられて学習したわけではない.お乳を飲んで満足し,眠りに落ちる.寝顔をじっと見ていると,ほんの1〜2秒だがほほ笑みを浮かべる.この「新生児微笑」は学習したものではなく,生まれつき備わっている,いわば本能的なものである.笑いは人間存在の一部として,人間に組み込まれているのである.
私はホスピスという場で約2,500名の患者さんを看取った.そして多くのすばらしい笑顔に出会った.その人たちは「死が近いにもかかわらず」笑ったのである.笑いは本来的に人間存在の一部であり,何かがそれを覆わなければ自然に出てくるものなのだ.たとえば痛みが強いとき笑顔は消える.痛みが笑いを覆ったのである.痛みが軽減すると笑いが戻る.不安が強くなれば笑えなくなる.不安が笑いを覆ったのである.不安が和らぐと笑顔が出るようになる.
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