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はじめに
注意(attention)はさまざまな認知機能の基盤である14)。ある特定の認知機能が適切に機能するためには,注意の適切かつ効率的な動員が必要である。つまり,認知のターゲットの注意による選択が要求される。また注意機能は,広く社会的生活を営むためのさまざまな行動に介在し,これを統合する役割も持つ。すなわち,注意による行動の制御機構である。したがって,脳損傷後や精神障害例における注意の障害は,多くの認知行動障害を引き起こす。
一方,遂行機能(executive function)とは,目的を持った一連の活動を有効に行うのに必要な機能であり,有目的な行為が実際にどのように行われるかで主に評価される。またこの機能は,人が,社会的,自立的,創造的な活動を行うのに非常に重要な機能とされる。神経心理学において,遂行機能という語に初めて明確な定義を与えたのは,Lezak11)である。以後,遂行機能という言葉が頻繁に使用され,局在性脳損傷例だけでなく,認知症,パーキンソン病,さらには統合失調症における認知障害については,この概念を用いた説明が行われている。特に,前頭葉損傷例に出現する行動障害を記述しようとする報告では,この言葉が使われない場合はほとんどない。注意障害や記憶障害は,その概念自体は比較的なじみやすい。しかし,遂行機能については,その概念の成立が新しく未解明な部分も多い。特に,遂行機能障害(機能の障害)と前頭葉病変(損傷の部位)とをイコールとし,単純かつ直接的に結びつける議論には注意が必要である。本稿では,注意障害と遂行機能障害について説明し,それぞれを評価する新しいバッテリーを紹介し,そのバッテリーにより評価した症例を簡単に紹介したい。
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