第48回 日本リハビリテーション医学会 学術集会/千葉 《シンポジウム》高次脳機能障害―座長/中島八十一
遂行機能と論理的記憶障害
石合 純夫
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1札幌医科大学医学部リハビリテーション医学講座
pp.210-214
発行日 2012年5月18日
Published Date 2012/5/18
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はじめに
外傷性脳損傷による「高次脳機能障害」では,脳卒中のようないわゆる巣症状は目立たないが,その障害は一様ではなく,検査結果の深い読みが必要である.両側性に前頭葉が損傷されることが少なくないために,遂行機能障害が起こりやすいのは事実である1).確かに,Wisconsin Card Sorting Test,Stroop課題,あるいはBADS遂行機能障害症候群の行動評価で障害がみられることが少なくない.しかし,復職が期待される比較的若い年齢層の高次脳機能障害者では,前述のような遂行機能検査の成績が必ずしも低下しているとは言えない.記憶障害も外傷性脳損傷後の高次脳機能障害としてしばしば起こるが,他のことをするときれいに忘れてしまうというアルツハイマー病のような前向性健忘は少ない.よく聞かれる訴えは,長い話が覚えられず頭からこぼれてしまうというものである2).これは論理的記憶の障害と考えられ,本稿では,症例を提示しながら,遂行機能との関連を含めて論じたい.
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