連載 高次脳機能障害の評価法
遂行機能障害
大塚 恵美子
1
1千葉県千葉リハビリテーションセンター
キーワード:
遂行機能
,
課題解決
,
グループ訓練
Keyword:
遂行機能
,
課題解決
,
グループ訓練
pp.887-889
発行日 2010年9月10日
Published Date 2010/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101857
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遂行機能とは―遂行機能障害の検査の留意点
遂行機能の働きにより,人は自ら目標を設定し,計画を立て,実際の行動を効果的に行うことができる.例えば,予約通りに病院を受診するには,何時頃に家を出ればいいのか,そのためには何時に起床して支度を始めれば間に合うのかといったことを考え,実行しなければならない.遂行機能に問題のある患者は,1時間以上も前に到着して待っていたり,逆に遅刻を繰り返すことがある.また,予定した電車に乗れないといった想定外の事態が生じた時に,病院に遅れることを連絡するなど,臨機応変に対処することが難しく,どうすればいいのかわからずに混乱することがある.
このように遂行機能は,目標や環境に適応的に行動するために,注意,記憶,視空間認知,言語などの認知能力を動員し,管理する能力である.したがって,遂行機能障害の検査では,課題解決に動員されるどの認知能力に障害があっても,行動の効率性は失われ,それが成績の低下として現れる.つまり,検査成績の低下は,遂行機能以外の認知能力低下が原因であるかもしれない.また,注意など他の認知能力に重い障害をもつ被験者には,検査の実施自体が大きな負担になることもある.よって,遂行機能障害の評価を行う前に,他の認知能力の評価を行うことが前提であり,そこで障害域と判断された場合は,被験者が遂行機能障害の検査対象であるかどうかを吟味する必要がある.
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