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特集にあたって
現在注目を集める認知症高齢者数は,2012年(平成24年)の時点で65歳以上の高齢者について国内約462万人と推計された(平成24年老健局高齢者支援課認知症・虐待防止対策推進室公開資料).一方,アルコール依存症は2013年(平成25年)の時点で国内109万人,その予備群にあたる多量飲酒者は980万人と推計された(平成25年厚生労働省研究班,WHO世界戦略を踏まえたアルコールの有害使用対策に関する総合的研究).単純な比較はできないが,訪問リハや地域で働くOTから「アルコール問題を抱えている方が多い」という声を聞くこともあり,その潜在患者数はデータを上回る可能性もあると考えられる.世界に目を転じるとWHO総会では,「アルコールの有害使用低減に関する世界戦略(アルコール世界戦略)」を2010年(平成22年)に採択した.また国は「健康日本21」や「アルコール健康障害対策基本法(平成25年成立)」の中で,不適切な飲酒はアルコール健康障害の原因とし,その予防と対策を示していることからも,アルコール依存に対する支援が求められる現状にあることがうかがえる.
OTはアルコール依存症臨床医等研修の対象であり,重度アルコール依存症入院医療加算(平成22年)の施設基準を満たす重要な職種である.このことからも,アルコール依存症への支援に関して,OTに対する期待は高い.診療報酬上,入院治療ではOTは集団を主としてかかわっている.また依存症治療では認知行動療法を用いた手法が主流となり,OTもその一翼を担っている.しかし,依存症患者への作業療法はこのままでよいのだろうか.いま一度,アルコール依存症領域の作業療法の治療的役割を考えるため,本特集を企画した.
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