講座 リンパ浮腫と作業療法・第5回【最終回】
緩和ケア主体の時期のリンパ浮腫のマネジメント
野知 有郁子
1
,
納谷 さくら
1
,
臼田 里絵
1
Yukako Nochi
1
,
Sakura Naya
1
,
Rie Usuda
1
1東札幌病院
pp.916-921
発行日 2017年8月15日
Published Date 2017/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001201033
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はじめに
がん患者のリンパ浮腫には,リンパ節郭清術や放射線治療,化学療法等,がん治療に関連した浮腫だけでなく,悪性リンパ浮腫と呼ばれる,悪性腫瘍が直接リンパ管に狭窄や閉塞をもたらして生じるリンパ浮腫1)がある.緩和ケアが主体となる時期の患者の浮腫には,これら局所性の浮腫のほかに,低アルブミン血症や悪液質,臓器不全等による全身性の浮腫が混在しており,原因が複数であることが多い(表1).
がん体験者の悩みや負担等に関する実態調査2)によると,「症状・副作用・後遺症」の悩みや負担においてリンパ浮腫による症状が5番目に多かったことが報告されており,リンパ浮腫が患者の生活に与える影響の大きさがうかがえる.浮腫の増強は,皮膚の張りや痛みによる苦痛,患肢の重さやだるさによる日常生活動作への影響等,患者の生活の質(quality of life:QOL)を低下させる一因となる.しかし,緩和ケアが主体となる時期のリンパ浮腫ケアのエビデンスは確立していないため,試行錯誤しながら行っているのが現状である.
ここでは,緩和ケア主体の時期の浮腫に対して,多職種で協力してケアにあたっている東札幌病院(以下,当院)での取り組みを紹介する.
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