提言
発達障害児の保護者を支援するときの大切な視点
石附 智奈美
1
Chinami Ishizuki
1
1広島大学大学院
pp.1158-1159
発行日 2015年11月15日
Published Date 2015/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001200401
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「わが子のために一生懸命に子育てをしてきたつもりだったが,私がわが子を一番苦しめていたことに気づいた」と涙ながらにある母親が言った.発達障害児の保護者に対するペアレントトレーニングでの最近の出来事である.自閉症スペクトラム障害の小学2年生の男児の母親は,わが子が保育園のときに,保育士から「お母さんがしっかりしないと,将来,お子さんは大変なことになりますよ」と言われ,自分がしっかりしないといけない,ちゃんとしつけをしないといけないと思い,できていないことを何度も指摘し,最終的には大声で怒鳴って子どもに従わせる毎日が続いていたという.
このペアレントトレーニングは,15年ほど前から開始した,発達障害児の保護者に対する支援プログラムである.保護者がわが子の大変さや自身の日常的な言動に気づき,自分の対応方法を変えることで子どもの行動が変わることを実感してもらい,良好な親子関係を築くための基盤を養うことが主な狙いである.しかし,子どもと保護者の個々の特性はさまざまであり,明確なノウハウがあるわけではない.毎回が試行錯誤の繰り返しであり,現在も模索している途上にあるが,この機会に15年を振り返り,約100名の保護者のペアレントトレーニングを通して培った,保護者支援をするときに私が大切にしている視点を明記してみたい.
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