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はじめに
成人期に達した発達障害(とりわけ自閉スペクトラム症)者は,今の世の中では生きにくいと訴えるものが多い1).成人生活を営むうえで「働く」ということは大きなウェイトを占めるが,ともに働く同僚や上司から度々常識がないと言われることがある.しかし,彼らは常識がないのではなく,定型発達者が考える「常識」というものがわからないから生きづらいのかもしれない.
小さい時から他の子供と同じことができない,わがままである,自分勝手であるなどと思われ,保護者から常に叱られ続けている発達障害児がいるが,彼らはなぜ怒られているのかがわからないため,同じ失敗を繰り返してしまう.その結果,保護者は叱って,叱って,叱って,思わず手が出てしまう.虐待の対象児には自閉スペクトラム症と考えられる子供が極めて多い2).学校に入るとどうであろうか.やはりみんなと同じことができない,変わった行動をするなどで恰好のいじめの対象となり,休み時間には誰とも一緒に遊ばずに一人でポツンと孤立している子供もいる.このような状況が続くと学校が嫌になり,不登校となる可能性が出てくる.家庭では何とか学校に行くように指導されるため,家族にも会いたくなくなり,部屋に引きこもり状態となるか,あるいは逆に家を出ると学校ではなく,ゲームセンターなどに入り浸るようになり非行に走ることも考えられる.
このような問題の多くは学習障害(learning disorder;LD),注意欠陥・多動性障害(attention deficit hyperactivity disorder;ADHD),自閉スペクトラム症(autistic spectrum disorder;ASD)といった発達障害の子供の特性が学校や家庭で十分に理解されないため,彼らに合った子育てや教育となっていなかったことから生じたものと考える.
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