あなたにとって作業療法とは何ですか?・第11回
あなたにとって作業療法とは何ですか?
岩﨑 清隆
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1NPO法人 ぷねうま群馬
pp.1197
発行日 2015年11月15日
Published Date 2015/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001200412
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人類と私の生活の素
作業療法がわたしにとって生活の素であったというのは,文字の通りである.それまで何をやってもうまくいかなかった自分が3人の子どもを育て上げ,人並みの人生を送ることができたのは,この仕事に出会えたからに他ならない.この「作業療法」は,あるかなしかのわたしの能力のほとんど全部を引き出してくれ,そのことでわたし自身も生かされたと思っている.
人類も実は「作業」から多くの恩恵を受けてきたのではないか.今春,東京都美術館で『大英博物館展—100のモノが語る世界の歴史』を観た.第1番目のモノが200万年前の石斧で,最後の100番目がクレジットカードであったが,どの時代も人間にとって生きることは大変だったようだ.人は生活を生きやすくするためにモノをつくらざるをえなかった.現代も苛烈であるが,石斧をつくった古代人も,生きることは生易しいことではなかったはずだ.しかしそうでありつつ,同時に作業が喜びであり,慰めであり得ることをひとは知っていたのではないかと思う.作業が療法となり,職業となったのは,ここ1世紀くらいのことであるが,作業療法の手段である作業は,人間がもつ自らを生かし,救う最初で最後の能力かも知れない.
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