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Key Questions
Q1:イノベーションとは?
Q2:産学連携とは?
Q3:シンクタンクとは?
はじめに
京都大学の山中伸弥教授のiPS細胞の研究は,まさにイノベーションを引き起こした.今後リハ分野を含めた患者の治療だけではなく,再生医療や創薬に関連した企業や行政システムを含めると,その社会的な利益と影響は計り知れない.経済産業省の試算によると再生医療市場は,今後2030年には1.6兆円,2050年には3.8兆円に上るという.これらの背景にあるのは,産学の連携である.山中教授がノーベル賞の受賞前に京都マラソンに出場し,研究の寄付を呼びかけていたことを知る人は少なくないだろう.人の能力と信念,熱意,行動力が社会に大きな変革をもたらす可能性は,医療の世界だけではなく,あらゆる分野に広がっている.産学連携によって企業の資金的および商品化・企画化サポート,国内外研究者の学術的交流,そして研究成果の普及や資金提供により産学連携を促進する省庁や行政による官の役割も必要であり,それぞれがall-winになることがとても重要である,もちろん医療・保健・福祉の場合は,対象者である患者,家族もその中に入る.
作業療法の分野が産学のいずれに位置づけられるかについて,明確に述べたコメントやディスカッションを記憶しているわけではないが,筆者は上記2分野に官も加えた「産官学」いずれの要素も含むべきだと考える.地域や医療の臨床現場で実際にサービスを提供する“産”,サービスの基盤となる作業療法学の発展に寄与する役割としての“学”,サービスを円滑に進めるシステムや制度の整備を行う“官”の役割,本来はこれらを融合していく能力を有するコーディネーター的存在が必要だと思うが,現在のところ,3分野それぞれがいずれかに偏っており,お互いの力を融合し,大きな成果を発揮できていないように思われる.同じ領域や集団の中だけでは,創発は生じにくいことは,企業がヒットする新商品を開発するプロセスを目にすると明らかである.他の分野に関心をもち,提言を素直に聞き入れる構えと,コミュニケーション能力が必要である.
基礎研究を含めた作業療法の発展も期待したい.近年中にiPS細胞を用いたリハ治療も開始されるだろう.その場合には,生活の中で本人が価値を感じ希望する作業が中枢神経系の可塑性を促す可能性は十分ある.
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