連載 高齢化社会の福祉と医療を考える・19
アイデンティティ・トリックという概念
木下 康仁
1
1立教大学社会学部
pp.298-301
発行日 1988年3月1日
Published Date 1988/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661921949
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御存知「この印籠が目に入らぬか…」
3つの場面について始めに説明しよう.
数年前の話になるのだが,ある特別養護老人ホームを見学したときのことである.ラウンジに少し大型のテレビがあり,10人前後の老人たちが『水戸黄門』の再放送を見ていた.そのとき老人たちから,この番組を大変楽しみにしているという話を聞いた.この種の施設ではたいてい午後に少しくつろぐ時間があるもので,老人たちにテレビを見てもらったりすることが多いのを知っていたから,ここでもそうだなと思った程度であった.それに年を取るとやっぱり時代劇が好まれるのだろうと,勝手に解釈していたように思う.
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