連載 私のすすめる本・11
成熟期のアイデンティティ
服部 祥子
1
1大阪人間科学大学
pp.882-883
発行日 2002年11月25日
Published Date 2002/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663903304
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先頃雑誌のコラムで「マディソン郡の橋」が消失したという文章を目にした.映画化された同名のベストセラー小説(ロバート・ジェームズ・ウォラー著,村松潔訳,文藝春秋社,1993)に出てくる,年齢100歳以上の古い屋根付き木の橋が燃えてしまったというニュースは,私の脳裡にフランチェスカとロバートという決して若くはない女と男の愛の物語を鮮やかによみがえらせた.人妻の不倫のストーリーと切って棄てられると胸が痛む.もっと深く読み込むときっと何かが見えてくると信じて,この本をおすすめしたい.
『マディソン郡の橋』の筋書きは簡単である.ある暑い8月の朝,アメリカ中西部のアイオワ州マディソン郡(架空の郡)にある古い屋根付きの橋を撮影しに来た52歳の写真家ロバート・キンケイドと,イタリア生まれの農家の主婦で,10代の2人の子どもの母でもある45歳のフランチェスカ・ジョンソンの出会いから別れまでの4日間の愛を中心に,それ以前とその後の人生を綴った物語である.
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