特集 理学療法の展望
21世紀の理学療法―私はこう考える
地域における理学療法士のアイデンティティ
鶯 春夫
1
Uguisu Haruo
1
1橋本病院理学療法科
pp.910-911
発行日 1996年12月15日
Published Date 1996/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551104940
- 有料閲覧
- 文献概要
私は昭和61年に理学療法士免許を取得し,整形外科病院に1年間勤めた.その後,現在勤務している特例許可老人病院に移り,今年で10年目を迎える.わずか1年でこの病院に移ったのは,理学療法士に高い期待を持ち,保険点数よりも内容を評価してもらえる医師のもとで働きたかったからである.学生時代には就職先として老人病院など考えたこともなかったが,今はコメディカルスタッフが看護婦のみで,理学療法士が自分ひとりというこの病院に就職できたことを感謝している.それはこの環境が理学療法士としての視野を何倍にも広げてくれたからである.
寝かせたきり改善のためのギャッチ坐位推進運動および離床運動,ベッドの脚切りやベッドの下に潜り込んでの移動用パー等の設置,ポータブルトイレフレームや入浴介助具等の導入,精神機能や痴呆の評価,便秘に対するアプローチの実施,遊びやゲームの活用,季節行事の企画運営および家族やボランティアの参加促進,ケースマネージャーとしての働き等,一般的な理学療法の枠から外れ,看護や作業療法,ソーシャルワーク的な内容も積極的に実施することにより,理学療法の専門性をより明確にすることができた.また,理学療法の枠を広げて関連スタップとの交わりを多くして十分なコミニケーションをとることにより,よく問題となっていた「できるADL」と「しているADL」の差もほとんどが解決できた.
Copyright © 1996, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.