特集 アイデンティティに迫る—社会的ニーズへの挑戦
—作業療法のアイデンティティ(特性)を活かす:事例⑥—在宅生活を支える作業療法とは
岡野 裕
1
Hiroshi Okano
1
1有限会社明石福祉介護サービス
pp.913-915
発行日 2015年8月15日
Published Date 2015/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001200334
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はじめに
私は,リハビリテーションセンターで作業療法の臨床を歩みはじめた.学校では「生活を支援する仕事」と学んだが,実際には,心身機能とADLしかみえていなかったし,それ以外のことを訊かれても困っていた.社会経験が乏しく臨床経験もない私に対して,当時の患者さんは,私が応えられる範囲の内容を,私がわかる言葉で会話してくれていたと思う.
そんな暗中模索の中で,診療時間外に病棟で患者さんと話す時間をもつようにした.普段のリハの場面では聴くことができない話をしてくれる人が多かったからである.病気を患って数カ月の混乱の中,ご自身の不安や葛藤,家族への思い,在宅生活への希望,これまでの生活や趣味の話などを語ってもらい,患者さんの言葉から目標を一緒に決めることもできてきた.少しずつ生活を支援するイメージがわかりはじめたころ,OTを志したときから目指していた在宅へ臨床の場を移すこととなった.
現在は,介護保険事業所では訪問看護ステーションからの訪問や居宅介護支援事業所の介護支援専門員(ケアマネジャー)としての活動,兵庫県立西播磨認知症疾患医療センターでは外来リハと兵庫県からの受託事業の実施,兵庫県たつの市地域包括支援センターでは認知症初期集中支援チームに参画している.民間の事業所,病院,行政のどこにおいても作業療法の視点は独特であり,周囲から活用してもらえると感じている.以下にそれぞれの場で私が経験した事例や取り組みを紹介する.
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