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はじめに
大学で身体障害作業療法分野の教員となって3年目となりました.それ以前は急性期,回復期,介護老人保健施設での臨床に10数年間かかわってきました.脳血管障害の専門医療センターに長く勤務したこともあり,脳血管障害者への作業療法に最も関心があります.今回から3回にわたって「脳血管障害者への心理社会的援助メソッド」という,私が開発してきた方法について紹介したいと思います.なお,これは脳血管障害を発症した当事者に対する新しい作業療法というわけではなく,OTが自らの臨床を検証する(自身で点検してみて気づきを得る)ための方法論というところが特徴です.
この連載を始めるにあたって,第1回目の今回は,「脳血管障害者の心理社会面への作業療法の援助とは何か」について説明します.最初から「脳血管障害者への心理社会的援助メソッド」を開発しよう,と考えていたわけではありませんでした.そのきっかけと,脳血管障害者の心理社会面に対して作業療法が行う援助の内容を書くことにします.
従来の脳血管障害者への作業療法では,身体面の機能回復を促進させることが何よりも重視されてきました.精神面については,身体面の回復のために意欲を引き出さなくてはならない,という手段的な位置づけでした.私はこうした作業療法のあり方に異議を唱えたいのです.むしろ主として精神面を支援するのが作業療法であって,そのために身体面へのかかわりも行うのが本来的です.これについて,作業療法ではクライアントの内部に意志・習慣化・逆行能力があるとみて,人の精神面を重視するといわれています1).私は臨床での両者の位置づけに関する認識を逆転させたいと大それたことを考えています.
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