講座 作業療法研究と倫理・第2回
医療における研究倫理問題
飯島 節
1
Setsu Iijima
1
1国立障害者リハビリテーションセンター自立支援局
pp.132-137
発行日 2015年2月15日
Published Date 2015/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001200126
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
Key Questions
Q1:ヘルシンキ宣言とは何か?
Q2:インフォームド・コンセントが得にくい場合にはどうしたらよいか?
Q3:利益相反はどのように管理すべきか?
はじめに
「倫」とは仲間,人間,世間等のことであり,「理」は物の様子やことわりを意味する.したがって「倫理」を直訳すれば「人間模様」あるいは「世間風景」となり,人と人とがかかわり合う場での相応しい振る舞い方や,仲間の間で守るべき秩序という意味になる.広辞苑(第五版)では「人倫のみち,実際道徳の規範となる原理,道徳」とあり,一般的には倫理と道徳とはほとんど同じ意味で用いられている.
医療にはサイエンスとアートの要素がある.サイエンスは実証に基づいた再現性のある知識の体系であり,世界共通の普遍的な理論に基づいている.サイエンスは適切に記述することによって人から人へ伝達可能であり,それは医学教育として体系的に行われている.しかし,サイエンスとしての医療には,それを実際の患者に適用する場面において,人それぞれで大きく異なる個性,文化,権利,責任等にかかわる部分に限界がある.すなわち,医療にはサイエンスのみでは解決できないさまざまな課題があるため,アートの要素が必要となる.アートとしての医療とは,サイエンスとしての医療を,個々の患者や家族,そして地域社会に適用することであり,それを支えるものが倫理である.
本稿では,医療が直面する倫理的課題について,特に医学研究とのかかわりを中心に概説する.
Copyright © 2015, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.