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はじめに
当社有限会社リハシップ あいは,鹿児島県北部に位置する人口5万6,000人,高齢化率27.3%の出水市にある.当社の理念は,「あなたを愛で支えます」であり,運営目標は「地域でのリハビリテーション理念の実現」である.また,スローガンは「愛とチームの力で“その人らしさの回復”を全力支援します!」である.
筆者は,21年間の病院勤務を経て,地域でリハの受け皿をつくることを使命と定めて起業し,早10年が経過した.石の上にも3年,桃栗3年柿8年というが,筆者の会社経営は,その上の10年に達した.10年で学んだことは多いが,最大の成果は「エンパワーメントの効果の実感」である.筆者は,経験上社会生活のほとんど(個人や集団・組織の成長や適応等)に「エンパワーメントの理論と実践」が有効ではないかと考えている.
今回,編集部から「脳卒中者の外出や旅行に必要な知識,配慮,方法等を日本の現状を踏まえてご紹介いただきたい」と依頼があった.脳卒中者に限らず,障害をもった方にとって,外出や旅行のハードルは高い.筆者は,日本の現状として,段差や階段,交通機関等,環境のハード面のハードルの高さもあるが,病気やケガや加齢で自己効力感を失った方の「心のハードルの高さ」も大きな課題と考える.
「心が動けば身体も動く」という大田仁史氏の言葉があるが,外出や旅行を考えることさえあきらめてしまった方が,もう一度「行ってみたい」と心が動くような具体的な取り組みと仕組みが,今,私たちに求められていると考える.
その高いハードルを越えるには,本人のエンパワーメントが不可欠であり,同時に支える側のエンパワーメントも不可欠である.支える側,支えられる側が,共にエンパワーメントされてはじめて対等の関係になれると考える.
本稿では,主に当社の旅行支援チーム「愛たび倶楽部」,「マイたび倶楽部」,「マイ愛たび倶楽部」の活動を通して,脳卒中者の旅行や外出について必要な知識,技術,配慮,他職種連携等をエンパワーメント,達成感,イノベーションの視点から考えてみたい.
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