特集 レクチャーの達人—とっておきの生ライブ付き!
【第Ⅰ章:カリスマ達のレクチャーの極意 非医療者編】
❹今この瞬間を生きる
今井 美範
キーワード:
「慣れだれ崩れ=去れ」
,
心身ともにケアする
Keyword:
「慣れだれ崩れ=去れ」
,
心身ともにケアする
pp.1446-1447
発行日 2022年12月15日
Published Date 2022/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429204070
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ミュージカルとの出合い
私がミュージカルの世界に踏み込んだのは2002年のことだった。まだ19歳だった私は右も左もわからず、稽古について行くのに必死だったことを思い出す。私にとっては、劇団四季が初めての仕事場で、『マンマミーア』という演目が初めての作品だった。稽古初日に主役の方が台本をほぼ見ずに“本読み”(出演者が脚本を読み合わせること)に参加している姿を見て、驚いたと同時に、プロの世界の厳しさを垣間見た気がした。その時、私は事前に台本を読んでもいなければ、楽譜にも目を通していなかったのだ。
プロの世界の厳しさをまざまざと実感したのは、これだけではない。よく生前、浅利慶太先生が「慣れだれ崩れ=去れ」と口になさっていた。劇団四季ではミュージカル『ライオンキング』を含め、たくさんの作品がロングラン公演されていて、役者たちは何十回、何百回と同じ役を演じることがある。これは、契約が1年だったり、契約が伸びて2、3年同じ作品に関わることになるためだが、そうすると、毎回新鮮な気持ちで行うのが難しくなっていく。その役に慣れることはとても大事なことで、いい意味で作品に慣れて、慣れることでその役をもっと深めることができるのだが、その慣れが“こなす”慣れになると、だんだんとだれて、崩れていくことになる。そうならないために、ロングラン公演に関わっていた時は、かなり気を遣ったものだ。
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