特集 市販薬オーバードーズ 自力での苦痛緩和と見えにくいSOSに私たちはどう応えるか
OD倶楽部—クリスマス・イブと大晦日
倉田 めば
1,2
1大阪ダルク
2Freedom
pp.122-125
発行日 2025年3月15日
Published Date 2025/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.134327610280020122
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古くて新しいオーバードーズ
2022年夏、私は市販薬のオーバードーズ(以下、OD)で悩む一人の看護学生の相談にのっていた。現在、大阪ダルクの日中のミーティングに通っているのは、主に刑務所を出所してきた覚醒剤依存症の男性たちが中心となっている。ODの彼女がその中でやっていけるはずもないし、相談にはのったものの、次の場所がない。
思い出していた。40年近く前、はじめて私のパートナーCと出会ったときのことを。大阪で発足したばかりの薬物依存の自助グループのプログラムを紹介し、自身の回復の体験を伝えるメッセージ活動をするために精神科の女性病棟を訪れた。彼女は、私の話を聞きにきた女性患者のうちの一人だった。私が何を話しても、小学生が先生の声がけに応えるように、ただ切羽詰まったように「はい」「はい」という機械的な返事が返ってくる。子どもの頃から抑圧的に言わされてきた言葉と、これからの人生の決意表明が「はい」という一つの短いフレーズの中に集約されているような響きだった。病院の中で20歳を迎えたばかりのCはブロン依存症で、ブロンを使いながらフラフラの状態で看護学校で准看護師の免許を取得したという。退院してアディクションの自助グループにつながり、薬を使わない生活が始まっていったのである。現在は大阪ダルクの女性のグループホームの代表を務めている。

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