Japanese
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特集 がんの痛みと作業療法
トータルペインに対する作業療法
Occupational therapy to total pain
熊野 宏治
1
Koji Kumano
1
1パナソニック健康保険組合 松下記念病院
pp.287-292
発行日 2014年4月15日
Published Date 2014/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001100453
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Key Questions
Q1:トータルペインとは?
Q2:トータルペインに対するアプローチ方法とは?
Q3:トータルペインをとらえることで広がる可能性とは?
トータルペイン(全人的苦痛)とは?
トータルペイン(全人的苦痛)とは近代ホスピスの母シシリー・ソンダース(Cicely Saunders)博士が終末期がん患者とかかわる中で患者が経験している複雑な苦痛について提唱した概念である.彼女はがん患者が抱えるさまざまな苦痛を,身体的苦痛,精神的苦痛,社会的苦痛,スピリチュアルペイン(適切な表現がないのでそのまま記載)が相互に影響し合って形成されるものとし,がん患者の苦痛を身体的な一面からみるのではなく,トータルペイン(全人的苦痛)ととらえていくことを提唱した1).
臨床場面で患者は身体的苦痛を「びりびりしびれて痛い」(神経障害性疼痛),「抗がん剤の影響で体がだるい」(倦怠感),「痛くて眠れない」(不眠)等と表現されるであろうし,精神的苦痛を「本当にこの先,歩けるのだろうか?」(不安),「この痛みはいつまで続くのか?」(恐怖)等と表現されるであろう.また,社会的苦痛を「私が死んだら家族やお金はどうなるのか?」(家族の行く末や経済的な心配),「体力がないので家事はヘルパーに任せなくてはいけない」(家庭内での役割の喪失)と表現されるであろうし,スピリチュアルペインを「なぜ私がこんな目に?」,「何も悪いことはしていないのにばちが当たった」,「今まで生きてきた意味はなんだろうか?」と表現されるであろう.これらはそれぞれ個別に出現するものではなく,お互いに影響し合っている(図1).
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