徹底分析シリーズ 緩和医療を考える
緩和ケア医療におけるスピリチュアル・トータル ペイン
広沢 正孝
1
Masataka HIROSAWA
1
1順天堂大学 スポーツ健康科学部
pp.222-225
発行日 2007年3月1日
Published Date 2007/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101100222
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現代文化は生や生産のみに目を向け,死やそれに裏打ちされた成長・成熟に目を向けようとしない,いわば死を拒否した文化といわれている1)。とりわけ科学技術の進歩・発達によって,信仰や宗教は無用なものとして切り捨てられ,その結果,病や死が,人間の「友」ではなく,打ち倒さなければならない「敵」となってしまった2)。世の中があまりにも単純に生だけに心を奪われ,生一辺倒になったために,かえって生そのものが貧しくなったようにも思われる3)。日本社会のいたるところで,「生きる意味」の雪崩のような崩壊4)すら生じているという。今,人がスピリチュアルな事象を問われる背景には,このような時代の危機感が存在するのであろう。
今回筆者に与えられたテーマは,精神科医からみたスピリチュアル・トータルペインの持つ意味であると思われる。確かに現在,スピリチュアルな問題に最も直面するは,緩和医療と精神医療の現場であろう。ここで問題になるのが,われわれが関与するスピリチュアリティとはいったいどのようなものなのか,ということである。
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