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Key Questions
Q1:「参加」における生活・人生の社会的側面とは?
Q2:「参加」促進へのOTの役割とは?
Q3:OTの他職種との連携のポイントは?
はじめに
国際障害分類(International Classification of Impairments Disabilities and Handicaps:ICIDH)の「社会的不利」は「社会レベル」の問題として,OTの役割というより,福祉制度の対象と考えられやすかった.しかし,国際生活機能分類(International Classification of Functioning, Disability and Health:ICF)の「参加」では,より専門的で「個人レベル」の支援が明らかに重要になる.最初に,そのような例を3つ紹介してみたい.
例1:交通事故で脳損傷を受け短期記憶を失った若い女性.ドッグ・トレーナーの仕事では短期記憶の障害が影響しない.まったく問題がないようにみえるので,雇用主が事務の仕事を頼むと,それはまったくできない.日常生活にも多くの問題がある.しかし,彼女は優秀なドッグ・トレーナーとして充実した職業生活・人生を送っている.
例2:筋萎縮性側索硬化症(ALS)の40代男性.告知直後は尊厳死を望んだが,早期からパソコンや電子メール,支援機器の使い方の訓練を始めた.全身麻痺後もまぶたの動きを使って文章を書き,コミュニケーションを行い,世界中の人たちとインターネットを通して交流し,支援機器の開発に貢献し,書籍の出版の希望をかなえた.現在は娘の結婚式に出席したいと考えている.
例3:長期に福祉的就労を続けてきた知的障害者に「市長になりたい」という就労希望があり「障害受容」の課題が指摘された.しかし,なぜ市長になりたいのか詳しく聞くと,施設から市長を表敬訪問したときに,天井の高い部屋で多くの人たちと関わっていたから,ということであった.つまり,狭い施設で誰とも会わない作業は嫌だという意味だとわかった.それをふまえた就労支援により,現在,天井の高い図書館の案内係として,理想の仕事に就いている.
これらの事例はICIDHの「社会的不利」の考え方では例外的であろうが,ICFの「参加」の特徴をよく示している.第一に,障害は個人の問題だけでなく,社会側の環境改善によりその状況は大きく改善できる.第二に,ICFの「参加」は,「生活・人生場面への関わりのこと」と定義されているように,より本人中心で個別的なアプローチが重要性を増している.ICIDHの「社会的不利」は障害により失ったものを数え上げるようなものであった.一方,ICFの「参加」では,本人が満足できる生活・人生が達成できれば,失われたものは気にしない.
本稿では,ICFの「参加」の内容について,WHOによるICFの序論1)の説明にしたがって詳しく検討することを通して,OTの日常の専門的実践との関係が認識できるようにし,さらに,「参加」支援という目標を共有している関係分野・職種との連携のあり方についても考えてみたい.
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