連載 睡眠と健康を考える・7
睡眠が労働に果たす役割
中田 光紀
1
,
頓所 つく実
2
1国際医療福祉大学大学院医学研究科公衆衛生学専攻
2国際医療福祉大学大学院医学研究科公衆衛生学博士課程
pp.390-396
発行日 2019年5月15日
Published Date 2019/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401209146
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はじめに
日本人は世界的に見ても睡眠時間が短い国民である.経済協力開発機構(Organisation for Economic Co-operation and Development:OECD)が発表した2018年のデータによれば,日本人の1日の平均睡眠時間は7時間22分と,参加30カ国中,最も短い.また,NHKが1960年から5年ごとに行っている「国民生活時間調査」では,日本人の睡眠時間は調査開始以来,一貫して短縮しており,時間にすれば平日は平均して毎年約40秒短くなっていることが示されている.睡眠時間を削って活動(労働)時間を長くすれば,生産性は向上し,競争社会の勝者となれるのだろうか.近年の睡眠科学による発見は,これまで信じられてきた「根性論」とは異なる結果を示している.睡眠をおろそかにすれば,睡眠不足や睡眠の質の低下が引き起こされ,日中の眠気の増加や疲労の蓄積が起こり,メンタルヘルス不調や生活習慣病の発症が加速化される.産業の現場では,集中力の低下による生産性の低下,労災,病欠やプレゼンティーズムの増加,企業の医療費の負担が増える.
本稿では,働く人々の睡眠の実態を主に睡眠時間の観点から概観するとともに,睡眠と表裏一体にある労働との関係について解説する.そして,労働者の短時間睡眠や睡眠不足を解消するヒントを提示する.
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