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はじめに
SSTとは“social skills training”の略で,「社会生活技能訓練」や「生活技能訓練」等と呼ばれ,小児分野では「社会的スキル訓練」と呼ばれる.SSTは対人状況における認知と行動の取り方を系統的に訓練していく治療法で,行動の変容に重きをおく認知行動療法(図1a)の一つである1).SSTの基本はグループ形式で,基本訓練モデル2)(表1)や問題解決技能訓練,自立生活技能訓練(social and independent living skills:SILS)モジュールが中心的な技法であるが,この他にも個別的なSSTや,基本スキルをステップ・バイ・ステップで進めるBellack方式のSST,認知に焦点を当てたSST(認知療法や認知機能リハと架橋した実践)等,SSTの技法は発展を続けている.邦訳されたSILSモジュールには,服薬自己管理,症状自己管理,基本会話,余暇の過ごし方があるが,その開発にはOTも加わり,2006年(平成18年)現在,23言語に翻訳されて6カ国で使用されている3).
SSTの起源は,1970年代の米国において,Wolpeらの自己主張訓練4)に,Banduraの社会学習理論5)を取り入れて体系化されたことにさかのぼる.精神障害領域では,Libermanらが慢性精神障害者に適用して,今日まで全世界的に工夫と効果検証が重ねられてきた.わが国では1980年代後半に導入されて,入院に限定されるものの1994年(平成6年)に診療報酬化され,1995年(平成7年)にはSST普及協会が発足したことが全国的に普及する契機となった.
今日,リカバリーとウェルネス(心身の健康増進)を目的とした米国における精神保健領域の作業療法は,SSTの行動強化が作業療法の基本理念と一致するとみなされ,認知行動療法に基づくSSTに重点がおかれている6).その点で,SSTはOTにとって隣接領域としてなじみのある治療法となっている.
本稿では,OTが活用するうえで知っておきたいSSTの知見,すなわち背景にあるリハの理念と思想,基礎理論,基本構造と本質的要素,エビデンス(科学的根拠),今後の展望について解説する.
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