特集 触法障害者・触法高齢者への支援と作業療法
コラム:刑務所でのSSTで感じたこと
三浦 敬二郎
1
1原クリニック
pp.1122
発行日 2014年10月15日
Published Date 2014/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001200012
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約8年前,前田ケイ先生(ルーテル学院大学名誉教授)に誘われたのがきっかけで刑務所でのSST(Social Skills Training)にかかわることになりました.最初は盛岡少年刑務所に半年ごとに1日だけ行っていました.このころは,刑務所でのSSTのような教育的な取り組みは,やっと始まったばかりでした.JR盛岡駅から刑務所までは官用車で送迎してもらっていたのですが,車中,運転士さんや刑務所職員の方とのお話で「あいつらに何をやってもどうにもならないよ」,「そんなことやってもねー」等と言われることもあり,昔から続く刑務所の古い体質をしっかりと感じたりしたものでした.そういった中でSSTを効果的に行うのは大変なことだろうと思うと同時に,であれば,うまくいってもいかなくても,とりあえずやってみようという開き直った気持ちになったのを覚えています.
当時は,5〜8人のグループを3つ,90分ずつ連続して行いました.しかも対象者にとっては1回だけの講座でしたので,短時間で行えるように設定した課題を行いました.たとえば,「職場で電話の対応をする」,「初出勤の日に会社の人に挨拶をする」等,こちらからいくつかの課題を皆さんに提示して,その中から1人1つずつ選んでもらって全員がロールプレイを行いました.このころは刑務所という慣れない所でSSTの時間を回すのが精いっぱいでした.ただ,受刑者の方たちに好意的に迎えてもらったことで,私の受刑者に対する印象が,怖い人たちから,気さくな優しい人に変わっていたような気はします.
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