特集 OTの臨床実践に役立つ理論と技術―概念から各種応用まで
第5章:環境と動作・行動に関するもの
1.行動リハビリテーション
鈴木 誠
1
1新潟医療福祉大学
pp.744-749
発行日 2013年6月20日
Published Date 2013/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001100188
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理論の成立過程
行動リハビリテーションは,応用行動分析学(Applied Behavior Analysis)における行動制御の理論をリハに適用することによって成立した統合的理論である.
行動分析学(Behabior Analysis)は,米国の心理学者Skinner BF(1904-1990)が体系化したオペラント学習に関する行動制御の理論に端を発する.当時,パブロフの条件反射に基づくレスポンデント条件づけが行動制御研究の中心だったのに対し,Skinnerはオペラント学習に関する実験研究を推進させ,行動分析学を体系化していった.オペラント学習とは,行動の直後に生じた環境の変化(後続刺激:consequent stimulus)によって,その行動の将来の生起頻度が変化する過程をいう.行動分析学は,行動と環境の相互作用を詳細に分析することによって,「個体がなぜそのように行動するのか?」という問いに答えることを目指している.1938年(昭和13年)には,行動分析学の先駆けとなる『生体の行動(“The Behavior of Organisms:An Experimental Analysis”)』がSkinnerによって著された.近年では,行動の後に提示された後続刺激によってその行動の生起頻度が増加(強化:positive reinforcement)あるいは減少(弱化:negative reinforcement)する過程には,報酬予測誤差に基づく中脳ドーパミンニューロンの活動が関与していることが示され1),オペラント学習の背景にある神経生理学的現象も明らかになりつつある.
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