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■はじめに
我が国において地域医療の推進が叫ばれて久しいが,なお精神病院への長期入院者が多いのが現状で,大島らの報告9)によれば,「社会的入院」と呼ばれ社会での受け皿がないために入院を余儀なくされている患者が,2割近くあると推定されている。受け皿の必要性が言われ,デイケアや作業所が増加したというものの,いまだに不足していることがこの報告からも明らかである。しかし,精神の障害の程度に応じて,どのような施設や援助がどのくらい必要とされているのかについては,詳しい資料がなく十分に明らかにされたとはいえない。したがって,まず現状を明らかにして精神障害者の地域ケアやリハビリテーションを有効に展開・発展させるためには,大島8)が指摘するように,適切な社会機能の評価方法の確立が極めて重要であると思われる。
当院では,1989年にデイケア診療部が設置され,デイケア診療を開始した。当デイケアの概要については,すでに報告1,13)しているが,各年度を前期と後期に分け,半年ごとに更新手続きが必要で,そのつどスタッフとメンバーとで次の目標を話し合うようにしている。それをもとにしてスタッフは,それまでの評価と今後の目標についてスタッフ間で話し合い,その結果を主治医と意見交換することになっている。
当初は臨床的な観察だけから評価していたが,多職種からなるスタッフ間で評価の視点が定まりにくいことがあるため,評価のベースラインと変化をより客観的に把握することで援助や介入がしやすくなるのではないかと考え,行動評定尺度REHAB(Rehabilitation Evaluation Hall and Baker)1,2)の導入を試みることとした。その結果REHABは,デイケアだけでなく病棟や社会復帰施設など多くの場面で使用することが可能であり,今後の我が国における精神科リハビリテーションの発展にも寄与できることが明らかで,制作者の翻訳許可を得てREHAB(日本語版)を作成し入院患者も対象として使用してきた。そこで,その概要,信頼性と妥当性,実際の使用例などについて紹介し,精神科リハビリテーションにおける有用性について報告する。
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