Japanese
English
特集 作業療法における作品づくりの意味
作業の向こう側―認知症高齢者における作品づくりの意味
The other side of the occupation: the meaning of creating artworks for elderly people with dementia
上田 章弘
1
1介護老人保健施設 恵泉
pp.118-122
発行日 2013年2月15日
Published Date 2013/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001100033
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
Key Questions
Q1:認知症高齢者における作業療法の視点とは?
Q2:「役割」を実感へ導くには?
Q3:作品づくりにはどのような意味があるか?
はじめに
キーン! コーン! カーン! コーン! …….
乾いた鐘の音が校舎に響き渡り,授業終了を告げた.
その音が鳴り止んだ瞬間,“待ってました”と言わんばかりに,私は一目散で先生のところへ駆け寄るや否や,手に持っていた宝物を差し出した.
「先生,見てみて」
「上田君,上手だねー.これどうしたの!」
「教科書の絵見ながら今つくった」
私は自信満々にそう答えた.
小学3年の国語の時間,授業そっちのけで時間を忘れて必死でつくった“機関車やえもん”の粘土細工.教科書の挿絵にあった“やえもん”を机に入っていた粘土でリアルに再現.われながら上出来であったように記憶している.
“物をつくる”とはどういうことなのだろうか? 物をつくること自体非常に楽しく,私にとってあの瞬間は至福のひとときであったことはいうまでもない事実である.しかし,作業の向こう側にはもっともっと大切な何かがあった.「先生に見てほしい!」,「皆に見てほしい!」,「褒めてもらいたい!」そんなこころ動かす作業の向こう側があるからこそ,物づくりはより楽しく意義深いものであると感じている.
「作業療法における作品づくりの意味」というテーマを見たとき,まっ先に前述のエピソードが頭に浮かんだ.私にとって作品づくりは非常に大切な作業の一つである.
今回,認知症高齢者の作業療法として作品づくりをどのようにとらえ,どのように用いているのかを,実践を通し紹介していきたい.
Copyright © 2013, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.