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はじめに
今回,本稿の依頼があった際に考えたのは,このテーマで読者の興味を引きつける内容になるのだろうか,ということであった。もっと直接的に言うと,「スマートな国際学会発表を目指して」で発表の依頼があったことも,少し驚いた。なぜなら国際学会発表は特に目新しいことではなく,ごくあたりまえのことだと思っていたからだ。なぜ国内学会ではなく国際学会なのか,国際学会で発表をしない研究室が多いのか,という疑問もあった。そのような疑問を抱いて参加してみると,大学院生よりも教員(若手ではない)が目立つ印象があった。そして,現在の看護学は国際学会発表が議論の俎上に上がるほど,まだ混沌とした状況なのだなと感じた。
本稿の執筆にあたっては,「学生が国際学会で発表する意義」という視点からなら,筆者のこれまでの経験や考えを読者と共有することで,各研究室それぞれが研究活動を前に進めることができるかもしれないと前向きに捉えることとして,筆を進めていきたい。
当研究室の大学院生で,次稿でも執筆している森木友紀さんはEAFONSでポスター発表を行なった。そしてありがたいことに,ポスターアワードを受賞した。受賞は「オマケ」のようなもので,決してそれをめざして研究に取り組むわけではないが,よりよい研究をめざす1つの参考になることを願い,一定の評価を受けたのはどのあたりだったのかを振り返りつつ,国際学会発表とその「向こう側」にある研究者としての目標を常に見失わないよう,そのために必要なことを考えていきたい。
最初に断わっておくが,私自身はまだ教員歴10数年の「若造」である。私の恩師は本特集でも執筆されている牧本清子氏で,氏からは,「博士の学位を取得した後も10年間,研究を積極的に進めてやっと一人前だ」と言われて育ってきた。その教えには本当に感謝している。だからこそ,常にチャレンジしなければいけない気持ちを忘れずにいられる。私が学位を取得したのは2012年なのでまだ10年も経っていないが,せっかくの機会なので,自身の考えるところを紹介する。私の考え方は恩師の牧本清子氏,そして,氏自身がそうされてきて,私もその薫陶を受けてしばしば一緒に仕事をしている他領域(物理学や心理学,医学,情報工学,哲学など)の研究者の方々の影響を多分に受けていることを申し添えておきたい。
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