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特集 作業療法における作品づくりの意味
創造的な作業活動がもたらすもの―身体疾患を合併した精神障害のある方への支援
Effect of creating artworks: Support for a psychiatric patient with physical complications
畑田 早苗
1
1土佐リハビリテーションカレッジ
pp.123-128
発行日 2013年2月15日
Published Date 2013/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001100034
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Key Questions
Q1:身体疾患と精神疾患の関連性は?
Q2:対象者に適した活動の選択とは?
Q3:創造的な作業活動がもたらした意味とは?
はじめに
2011年(平成23年)の東日本大震災の後,ヴィクトール・E・フランクルの『夜と霧』1)が多くの人々に読まれたという.この『夜と霧』は第二次世界大戦の際にナチスの強制収容所に収容された著者自身が体験した過酷な状況を綴った著書である.非人道的で悲惨な事実を伝えているにも関わらず,われわれに生きる勇気を与えてくれる永遠のロングセラーとなっている.この震災で多くの大切な人や思い出をなくし絶望的な状況に立たされた人は多いだろう.慢性的な精神疾患を抱えていたり,回復の見込みのない疾患に苦しんでいる人も,状況は違ってもどこかで自分の「生きる意味」を求めてもがいていることに違いはない.世の中が豊かになっても自殺者は増え,時代が病をつくり出し,誰もが心を病んでもおかしくない時代だともいえる.フランクルは著書の中で,人間が「生きる意味」を実感しながら生活するために必要なものの一つとして創造性を伴う活動を挙げており,その価値が大きな支えとなることを伝えている.
今回紹介する症例も,身体疾患に加え精神障害を伴い,死の影を近くに感じる状況の中で「創造する活動」が自身に生きる意味と価値をもたらしたケースである.本稿では創造性を伴う作業活動がどのような意味をもたらし,生きる力へとつながっていくのか,疾患および作業の特徴を交えて考えてみたい.
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