連載 World Report on Disability 2011を読む・第1回【新連載】
刊行に至る経緯と報告書の概要
江藤 文夫
1
Fumio ETO
1
1国立障害者リハビリテーションセンター
pp.58-64
発行日 2013年1月15日
Published Date 2013/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001100012
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はじめに
障害のある人々(障害者)の人権と尊厳の保護と促進に関する国際的な取り組みとしては,20世紀半ばの国連における世界人権宣言の採択以来,さまざまな出来事があった.特に1981年(昭和56年)は「国際障害者年」として世界中で障害と障害者に関するさまざまな企画が実行され,引き続く「国連・障害者の十年」といった活動,さらに「新たな障害者の十年」といったような取り組みがなされてきた.障害をめぐって活発に取り組まれるようになった一方で,こうした取り組みの根拠となる科学的なエビデンスがきわめて希薄なことが意識されるに至った.
そこで,2005年(平成17年)5月の世界保健総会決議(WHA58.23)において世界保健機関(WHO)事務局長に対して,「最善の入手可能な科学的エビデンスに基づいて,障害とリハビリテーションに関する世界報告書を作成すること」が要請された.これを受けて,WHOと世界銀行(WB)による「障害に関する世界報告書(World Report on Disability)」1)が2011年(平成23年)6月に刊行され,ニューヨークの国連本部やジュネーブのWHO本部をはじめ,世界各国で本書の刊行を祝い,その宣伝と普及のためのセレモニーや会議の企画が行われた.私どもセンターにおいても,昨年度中にWHOの許可を得て本書の概要版の翻訳を行い,ホームページに掲載した2).
この世界報告書は,障害とリハに関わる人々には必読書であるが,わが国での関心は乏しいように感じられることから,3回に分けて紹介をさせていただく.なお,本文中に使用した英語略語については,各回の本文末に一覧として掲載する.
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