Japanese
English
特集 痛みと作業療法
痛みのメカニズム:痛覚と痛み認知
Mechanisms of Pain:nociception and pain
住谷 昌彦
1
,
宮内 哲
2
1東京大学医学部附属病院麻酔科・痛みセンター/医療機器管理部
2(独)情報通信研究機構未来ICT研究センター神戸研究所
pp.10-15
発行日 2013年1月15日
Published Date 2013/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001100004
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Key Questions
Q1:体性感覚刺激による侵害受容と痛みの感覚は同じ意味であるか?
Q2:大脳認知レベルでつくり出される痛みがあるか?
Q3:痛みを正しく理解するためには生物心理社会的モデルで考えなければならないか?
はじめに
ヒトの知覚系は身体ならびに身体外の環境を知るためのシステムであり,体性感覚,特に痛覚系は生体の防御系として重要である.しかし,ときには「痛み」そのものが生体にとって多大な侵襲となることもあり,「痛み」は“組織の実質的ないし潜在的な傷害と関連した,あるいはこのような傷害と関連して述べられる不快な感覚的,情動的体験”と定義されており,外来刺激からの危険や身体の器質的疾患の警告としての疼痛だけでなく,病的な疼痛も含む.このことから疼痛は,生理的疼痛と病的疼痛に分類される.しかし,このように大別されるものの,本来であれば生理的な疼痛であるはずの侵害受容性疼痛が持続する場合には痛覚系の過興奮状態が続くことによって,病的な疼痛に移行する.さらに,痛みは身体のみ,あるいは心理のみの問題ではなく,身体要因と心理要因は常に共存し,身体的な痛みの認知は心理因子によってさまざまに影響を受ける.このように痛覚(痛み)系はきわめて可塑性に富んだ系である.本稿では,痛覚の生理について痛覚伝導路(図1)1)と痛み認知における神経系の可塑的な変化を概説し,大脳レベルの疼痛認知機構とその修飾による治療について紹介する.
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