別冊春号 2021のシェヘラザードたち
第11夜 成功率30%の手術,あなたは麻酔を引き受けますか?—外科医の立場と麻酔科医の立場
中澤 春政
1
1杏林大学医学部 麻酔科学教室
pp.65-69
発行日 2021年4月15日
Published Date 2021/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3104200201
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成功率がきわめて低い手術の麻酔管理を外科医から依頼された際,あなたはどのようなことを考えるだろうか。“どれだけリスクが高くとも,外科医が手術が必要と判断したのであれば,できるかぎりの麻酔管理を行う”ことを信念としている麻酔科医もいれば,“無謀な手術には付き合いたくない”,“手術以外の方法があれば他の手段をすすめたい”と考える麻酔科医もいよう。最終的な結論を出すまでには,患者の意思,患者家族の希望,外科医への信頼,自施設の状況など,さまざまな因子を複合的に判断していかなくてはならない。しかし,そのような重症症例では,たとえ十分な検討を行ったうえで出した結論であっても,良い結果に結びつかないこともある。その際に患者の死を目の前でみることになるのは麻酔科医であり,自身の無力さに打ちのめされるのもまた麻酔科医である。
今宵お話しするのは,私が専門医を取得してすぐの時期に経験した,麻酔管理を引き受けることの重大さや責任の重さを痛感させられた一症例である。関係者への配慮のため,登場人物や施設には修正を加えたフィクションではあるが,似たような経験をもつ麻酔科医も多いのではないか。本症例を通じて,もう一度,超ハイリスク患者の麻酔・手術適応について考えてみたい。
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