別冊春号 2021のシェヘラザードたち
第10夜 あしたのために—力石の死は,丈の成長の始まりだった
中川 雅之
1
1NTT東日本関東病院 ペインクリニック科
pp.59-64
発行日 2021年4月15日
Published Date 2021/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3104200200
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合併症を起こした張本人は多くを語らない。事が重大であればあるほど,むやみに口にできないからだ。そのため,多くの合併症は,起こした本人よりも,その周囲にいた人々によって語り継がれていく。われわれの医局でも,多くの苦い経験談が先輩方によって語り継がれ,われわれの糧となっている。話を聞いておくと,同じ経験をしたときの対処法を学ぶこともできるし,困った時に相談に乗ってもらうこともできる。今夜は私自身が起こした出来事以外に私の周辺で起こった出来事について述べるが,少なからず患者に不利益を与えている可能性があるため患者の詳細は記述しない。また,学術的な考察は一つもないことをご容赦願いたい。
さて,若い読者は『あしたのジョー』という漫画をご存じだろうか。話の中に,ボクシングのトレーナーである丹下段平が,鑑別所に入れられた矢吹丈にボクシングの指導をするためにハガキを送る場面がある。ハガキの見出しは「あしたのために」で始まり,ジャブ,ストレートの技術を伝授している。私も本稿で,ペインクリニシャンとして戦っていくための技,精神を伝授しようと思う。矢吹丈のような熱い精神をもつ,あしたのペインクリニシャンのために。
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