- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
■臨床の視点
▲がん化学療法による末梢神経障害とは?
がん治療の進歩により,がん患者の生命予後が飛躍的に延長している。その進歩の1つが化学療法である。化学療法の発達により患者の予後は延長しているが,一方で,その投与には末梢神経障害がしばしば合併する。化学療法による神経障害性痛は鎮痛薬に抵抗性で,患者は難治性の痛みに悩まされる。末梢神経障害を引き起こす薬物としてタキサン系製剤(パクリタキセル,ドセタキセル),ビンアルカロイド製剤(ビンクリスチン),プラチナ製剤(シスプラチン,オキザリプラチン)があるが,なかでもパクリタキセルでは57〜83%と,高頻度に末梢神経障害症状が出現する1)。症状発現やその強さは1回投与量,投与期間,総投与量,合併症などに依存する。通常,症状は投与中止により改善するが,慢性化することもある。神経症状はいわゆる“グローブ&ストッキング様”であり,四肢末端に出現する。痛み,しびれ,知覚低下などの知覚異常が主であるが,まれに運動機能障害も出現する。指趾先端の無毛皮膚部で持続する痛み(on-going pain)が感じられ,“しびれる痛み”,“ピリピリする痛み”,“冷たい痛み”,“焼けるような痛み”,“ズキズキする痛み”,と表現されることが多い2)。パクリタキセル投与によって予後が延長しても痛みに悩まされればQOLは低下してしまう。さらに,痛みをコントロールできない場合には治療の中断を余儀なくされるため,末梢神経障害性痛は予後に影響する重大な問題である。しかしながら,発症機序が不明であり,有効な鎮痛薬は見当たらない。そこで,がん化学療法に伴う末梢神経障害性痛の機序の一端を明らかにして,その機序にもとづいた新たな治療法を開発するために研究を行った。
Copyright © 2018, MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD. All rights reserved.