特集 感染症3
Part 4 薬剤編
15.新しいグラム陰性桿菌用の薬剤を整理する—“消火器”に例えられる新規抗菌薬の位置づけ
土井 洋平
1,2
Yohei DOI
1,2
1藤田医科大学医学部 微生物学講座・感染症科
2ピッツバーグ大学医学部 感染症内科
pp.667-671
発行日 2023年6月1日
Published Date 2023/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3103901074
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新規抗菌薬の開発は停滞気味といわれてきたが,2014年頃から米国を中心に新規承認が相次いだ。その多くは多剤耐性,特にカルバペネム耐性を示すグラム陰性桿菌を標的としたもので,これにより実際に治療成績がかなり改善してきている。背景には,カルバペネム耐性腸内細菌目細菌(CRE*1),そのなかでも,特にKPC*2型カルバペネマーゼを産生する肺炎桿菌の世界的流行が2000年代半ばに始まり,対応できる治療薬の整備が急がれたことがある。したがって,これらの新規抗菌薬はKPC産生菌への活性の観点から整理されることが多い。
一方,国内ではKPC産生菌はほとんど検出されず,CREとしてはカルバペネマーゼを産生しないがカルバペネム耐性を示す菌や,IMP*3型メタロ-β-ラクタマーゼ(MBL*4)を産生する菌が多いことから,ピンとこない面があるかもしれない。そのようななかで,ザバクサ®(セフトロザン/タゾバクタム),レカルブリオ®(イミペネム/シラスタチン/レレバクタム)の2剤がようやく国内でも承認され使用可能となった。しかし,これらの新規抗菌薬は最後の一手であり高額でもあることから,ほかに安全かつ有効な選択肢がない場合のみに適正に使用されるべきものである。
本稿では,国内の耐性菌疫学をふまえたうえで,これら新規抗菌薬の位置づけについて議論したい。
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