特集 不整脈1—上室性不整脈
【ミニコラム②】心房細動合併の慢性心不全患者は全例アブレーションをすべきか?—まずは“No!”だが,その検証は“Half way up the hill”
甲谷 太郎
1
,
永井 利幸
1
Taro KOYA
1
,
Toshiyuki NAGAI
1
1北海道大学大学院医学研究院 循環病態内科学教室
pp.558-566
発行日 2022年2月24日
Published Date 2022/2/24
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3103900938
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社会の高齢化と並行して,日本における心不全入院患者は年間約1万人のスピードで増加しており,2030年には約130万人に達する1)と推測されている。感染症になぞらえて,心不全も「パンデミック」と称されるようになり,今後心不全患者を診療する機会はさらに増えることが予想される。
心不全は多因子疾患であり,併存症も多岐にわたるが,なかでも重要なのは心房細動である。実際,心不全患者の約半数に心房細動を合併し,逆に心房細動を発症した患者の3分の1に心不全を合併する。また,心房細動を合併した心不全患者は合併していない患者と比較し,死亡・心不全入院・脳卒中リスクが増加する2)ことが報告されている。さらに,両者は相互に病態を増悪させて悪循環を形成するため,心不全患者の治療方針を考えるうえで心房細動の診療を適切に行うことが極めて重要となる3,4)(図1)。
従来,心房細動の治療は主として薬物療法の選択肢しかなかったが,近年カテーテルを用いた高周波心筋焼灼術(カテーテルアブレーション)が目覚ましく発展し,その有効性を示唆する大規模臨床試験の結果が次々と報告されるようになった。しかしながら,それらの結果の解釈には注意を要する点が多く,専門医の間ですら“under debate”(表1)である5〜7)。そのため,本稿に掲げた問いには,まずは“No!”と言わざるを得ない。
本稿では,心房細動治療の歴史を紐解きながら,「どのような心房細動合併心不全患者にカテーテルアブレーションを適用すべきか」という実践的課題について述べる。
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