特集 老年科
【急性期各論】
8.高齢患者に起こる広範な機能低下:GFTTへのアプローチ—「年のせい」で終わらせない小さな働きかけが大きな変化を生み出す
林 恒存
1
Tsuneari HAYASHI
1
1今村総合病院 救急・総合内科
pp.663-673
発行日 2017年12月1日
Published Date 2017/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3103900484
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
- サイト内被引用
高齢者,なかでも75歳以上の後期高齢者は,ほかの年齢層と比較して救急外来受診,救急車による搬送の割合が高い。さらに入院となった場合,高齢であるほど入院日数が長期化するというデータが示されている1)。その理由として,高齢患者の多くが急病に対して非常に脆弱であり,平時の体調から逸脱した場合に,急速に身体・精神機能が低下し,しかもその回復には時間を要することが挙げられる。結果的に入院前の生活環境へ戻ることが困難になるため,新たな転院先の決定まで入院が長引く。加えて入院中のさまざまな合併症により,さらに長引くという悪循環に陥る。
しかし,この負の連鎖は,高齢の患者なら例外なく起こるわけではなく,実際のところ入院前の状態まで短期間のうちに完全回復する高齢患者も多い。つまり,脆弱性は,単純に「患者が高齢である」という事実だけで起こるのではなく,そこにはGeriatric Failure to Thrive(GFTT)またはFrailtyという臨床像が大きく関連している。高齢患者の入院診療では,GFTT/Frailtyに関連した臨床像を十分念頭において,検査・治療方針を検討することが,患者の予後をより好ましいものにするために大いに役立つ。
Copyright © 2017, MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD. All rights reserved.