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■入院患者の発熱原因─疫学
米国では院内での感染で毎年10万人が死亡
入院患者の発熱の原因は,後述するように多様であるが,特に問題になるのは感染症である。本来,病院は患者が疾患を治療し,元気になるべき場所なのだが,入院加療が仇になって,合併症に苦しむ患者が多いこともまた(望ましくない)現実である。米国では予防可能な合併症のコストは年間880億ドルと見積もられている1)。院内感染hospital-acquired infection,あるいは医療関連感染health-acquired infection(HAI)は特に重要で,毎年10万人が死亡しており,年間350億〜450億ドルのコストがかかっている2)。最大死因の癌と心疾患ですら,それぞれ毎年60万人弱の死亡であり,HAIによる死亡数は,米国に多い大腸癌と乳癌を合わせたそれよりも多い2, 3)というから,そのインパクトの大きさが理解できる。
米国では,その公的医療保険(メディケア,メディケイド)において,HAIなどの院内合併症に対する追加支払いを行わないことを決定した。ここでいうHAIとは,カテーテル関連血流感染catheter-related bloodstream infection(CRBSI),人工呼吸器関連肺炎ventilator-associated pneumonia(VAP),手術部位感染surgical-site infection(SSI),そしてカテーテル関連尿路感染catheter-associated urinary tract infection(CAUTI)である4)。このような施策にもかかわらず感染症そのものは減っていない5),という反論もあるようだが,いずれにしても「病院は患者がよくなる場所であり,院内で(感染症などの)合併症が発生することを看過してはならない」という米国の強い意気込みは感じられる。
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