巻頭言
精神医学における曖昧さと明確さ
青木 省三
1
1川崎医科大学精神科学教室
pp.120-121
発行日 1999年2月15日
Published Date 1999/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405904703
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多くの科学技術と同様に精神医学も進歩し,疾患の理解や治療においても確実な成果を上げてきた。特に最近は,最新の技術を用いて精神疾患の生物学的背景をより詳細に研究することや,明確な治療プログラム,システム,マニュアルなどを作ることや明確な治療技法を身につけることなどが求められているように思う。それらによって私たちは“明確になっていく”ことの恩恵に浴しているのだが,一方で,曖昧さの効用も忘れてはならないのではないかという思いがある。
精神分裂病の急性期に,「私は病気なんかじゃない」という人に,何とか服薬や休養を勧めようとするとき,「病気かどうかはともかく,少なくともあなたの神経はどこかピリピリと張りつめているように見える。少しピリピリをほぐす薬でも飲んで,休むことが必要かもしれない」と話す。明確な診断を告げるより,しばしばこのような曖昧なアプローチのほうが後の治療を良好にするのではないだろうか。
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